日本に短期的に戻ってくると、調剤薬局で薬剤師として働く機会があります。
毎回、異なった薬局で働いていると、色々な服薬指導の仕方を見させて頂くことができ、非常にありがたく思っております。
さて、今回の記事では、服薬指導で気になったケースを拝見したので、それについてもう少し考えてみたいと思います。
ある薬についての服薬指導
『この薬の効果は●●ですね。☓☓☓という副作用が出ることがあります。1日●●回服用してくださいね。もし、何かあったら先生にかかってくださいね。』
ここで言う最後の部分、『何かあったら』とはいったい何なのでしょうか。
もしかしたら特に意味もなく使っているのかもしれませんが、もし使うのなら、このように言うべきです。
『もし、○○○日以内に効果が出なかったり、●●●という副作用が出たら、すぐに先生にかかってくださいね。』
この2つの違いがわかるでしょうか。
では、ここで実際に具体的な薬を上げてみましょう。
尿路感染症に対してアモキシシリンが処方されたとします。
一般的な薬の説明をし終わった後に、これらの一言を付け足します。
①『もし、何かあったら先生にかかってくださいね。』
→ 具体的にいつどのような時に受診していいのか伝えていないので、患者からすると、どうしていいかわかりません。患者に対して礼儀を示すという目的でこれを伝えるなら良いのですが、薬剤師としてこれを伝える意味はあまりありません。本当にひどい症状があれば、患者も医師にかかるハズです。
②『もし、3日以内に症状の改善傾向が見られなかったり、蕁麻疹が出たり息が苦しくなったら、先生にかかってくださいね。』
→この伝え方は、効果と副作用のモニタリングを担っています。
効果については、一般的にいうと効果があるならば2,3日で出てくるはずです。3日後に症状や血液検査のデータをもとに評価するため、効果があれば継続、なければ、他剤に変更するのが通常です。
副作用については、ここでは薬剤性のアレルギーについて取り上げます。これらの症状が出たら、すぐに服用をやめる必要があります。
とりあえず、先生にかかってくださいね。という言い方では、全ての判断を医師に委ねていることと全く同じであり、それは薬剤師として失格であると私は考えています。
カナダで私が学んだことは、単純に薬の効果が何で副作用が何なのかということではなく、それらがいったい、いつどのようなタイミングで出るのか、それらを各々の薬剤について知っておくことの大切さです。
この考え方を、薬のモニタリングといいます。
薬剤師である以上、薬に関して起こった全ての責任は取るという心構えで仕事をしていきたいですね。
このモニタリングという考え方は非常に重要な概念ですので、また次回以降に詳しく書いて行きたいと思います。