今回のブログをぜひ読んで欲しい方
- 海外の薬剤師、服薬指導に興味がある
- より良い服薬指導ができるようになりたい
- あまり服薬指導に自信がない
- 何を說明すれば良いかわからない
今回は、カナダの薬剤師が薬の說明をするときに、『何を』、『どんな項目を』說明するか、というところに焦点を当てたいと思っています。
これを読めば、「薬剤師が患者に說明をするべきこと」がわかります。
そして、『なぜ』、それらが大事なのかも說明していきます。
カナダの薬剤師が使っている服薬指導の5つのフレームワークとは?
さっそくカナダの薬剤師が說明している5項目について書きます。
- 薬の基本的な情報 (General Information)
- 副作用 (Side Effects)
- 相互作用 (Drug Interactions)
- セルフモニタリング (Self Monitoring, what to expect and when)
- 非薬物療法 (Non-pharmacologic Therapy)
始めの3つは、普段から服薬指導で說明していると思います。
一方で、4のセルフモニタリングと5の非薬物療法について說明できているケースは少ないかなと思います。
私自身、この2つについてはカナダに行って、その存在を初めて知りましたので、ここを重点的に說明していきたいと思っております。
では、5つのフレームワークをもう少し詳しく見ていきましょう。
5つのフレームワークをもう少し詳しく見てみる
1. 薬の基本的な情報 (General Information)
基本的な情報とは、薬の名前 (成分名と商品名)、規格、用法用量、日数、作用機序, 保存場所などについて說明することです。また、吸入薬などその医薬品特有の説明事項があれば、その使い方なども說明します
2.副作用 (Side effects)
薬は良い作用だけでなく、悪い作用が起こる可能性もあります。それが副作用ですが、薬剤師の方はみなさんご存知ですね。
3. 相互作用 ( Drug Interactions)
薬によっては、他の薬や健康食品、食品と摂取することで、その効果が変わってくるものがあります。結果として、薬の効果が低下したり、副作用が強く出たりします。
4. セルフモニタリング ( Self Monitoring: what to expect and when )
セルフモニタリングとは、「セルフ」で「モニタリングすること」です。
全く說明になっていませんね。(汗)
「セルフ」とは、英語の「Self」から来ていますから、「自己で、自分自身で」という意味です。つまり、ここでは「患者自身で」ということを意味します。
「モニタリング」とは、私は、「薬の効果と副作用の評価を継続的に行うこと」と定義しています。
つまり、「セルフモニタリング」とは、「患者自身が薬の効果と副作用の評価を継続的に行うこと」です。
これを聞くと、患者が自分で薬の効果と副作用をチェックするなんて無理だろうと思うかもしれませが、この点については、今後「モニタリング」について、別記事を上げる予定ですので、そちらで詳しく触れたいと思います。
では、ここから実際に詳しく見ていきましょう。
セルフモニタリングするための、"What to Expect, when to expect it"とは?
このセルフモニタリングを実施するためには、"what to expect, when to expect it" という考え方が重要です。
expectは「予想する、予期する」という意味です。
つまり、その薬によって、「何が」予想され、それが「いつ」起こるだろうかを伝える、という意味です。
例えば、アセトアミノフェンやNSAIDSの鎮痛効果は、だいたい30-60分ほどで出現します。
この「鎮痛効果」が「何が」にあたり、「30-60分」が「いつ」に当たります。
つまり、 セルフモニタリングとは、
「この痛み止めは、飲んでから30-60分後に鎮痛効果が出てきますよ。」
と伝えることです。
5. 非薬物療法 ( Non-pharmacologic Therapy)
非薬物療法とは、「薬を使わない治療やケア」のことです。
糖尿病や高血圧などの生活習慣病であれば、ライフスタイルの改善 (栄養療法や運動療法) が良い例ですね。
他にも、アルコール摂取の制限、禁煙指導などを実施することも重要です。
例えば、運動習慣の無い糖尿病患者であれば、薬剤師が具体的な運動方法を勧めます。
"有酸素運動(ウォーキング、サイクリング、ランニング、バスケットボール、サッカーなど) 30-60分/日をできれば週5日してください"
などと伝えます。
他にも、感染症であれば手洗いやマスクなどの感染予防策の推奨、痔やリウマチ、変形性関節炎などについても、生活指導を実施します。
これで、セルフモニタリングと非薬物療法について少しわかって頂けたかなとは思います。
しかし、なぜ、この2つはカナダにおいて說明されているのでしょうか?
★なぜ、セルフモニタリングと非薬物療法は重要なのか?★
セルフモニタリングの重要性
セルフモニタリングは、「患者自身が薬の効果や副作用を継続的に評価すること」でした。
セルフモニタリングの考え方は、薬の効果、副作用、そしてアドヒアランスを最適化するため、重要なのです。
つまり、患者を教育することで、効果の不十分もしくは、副作用の早期発見に気づいてもらうのです。
また、薬剤師が、「いつ」「効果 (副作用)が」出ることを伝えることで、患者のアドヒアランスを向上させることも可能です。
みなさんのご存知の通り、患者の自己判断による薬の服用、減量、増量、中止をしてしまうケースは頻繁にあります。
例えば、リリカ(プレガバリン)という薬について考えてみましょう。
神経因性疼痛に適応のある薬ですが、その効果が発現するためには1週間は最低かかります。
しかし、痛み止めというと、患者は頭痛薬などの即効性のイメージが強いと思われます。
結果として、「2,3日飲んでも効果が無かったら自己中断してしまう」可能性が十分あります。
非薬物療法の重要性
非薬物療法は、「薬を使わない治療やセルフケア」です。
「薬」を使わないにも関わらず、なぜそれが「重要」なのでしょうか。
非薬物療法(セルフケア)は、薬物療法の効果を高めることができるからです。
多くの薬物療法は、非薬物療法の前に実施されることが非常に多いです。
なぜなら、1) コストがかからない( or安い) 2) 副作用がない (出にくい) からです。
また、非薬物療法にもエビデンスがしっかりしているものも多々あります。
薬剤師が非薬物療法を說明する理由
なぜ「薬剤師」が說明しなくてはいけないのでしょうか。
それは、薬剤師がプライマリーケアを担う最初の医療職種であり、
他の職種とをつなぐゲートキーパーの役割を担っているからです。
これは実際の臨床現場を考えていただければ、わかりやすいと思います。
患者が無料でアクセスできる医療者は誰でしょうか?
もし、健康について今すぐに相談したいというときに、誰に聞きますか?
恐らく、薬剤師しか出てこないと思います。
医師や看護師は病院やクリニックにいかないと会えません。また栄養士や理学療法士なども無料でというと中々身近に相談できる場所は中々いないでしょう。
それでは、誰が「非薬物療法」について說明しますか?
そう、これもまた薬剤師しかいないのです。
糖尿病や高血圧でクリニックにかかったとき、「栄養療法」「運動療法」についても誰かが說明する必要があります。
しかし残念ながら、それらのスペシャリストはクリニックや薬局にはいないというのが現状であるため、カナダにおいては、薬剤師がゲートキーパーとしての役割を示し、「非薬物療法」について說明しているのです。
今回のまとめ
これで今回のお話は終わりですが、「服薬指導を極めるための5つのフレームワーク」について、理解を深めることができたでしょうか。
5つのフレームワークは、
- 薬の基本的な情報 (General Information):
- 副作用 (Side Effects)
- 薬の飲み合わせ (Drug Interactions)
- セルフモニタリング (Self Monitoring, what to expect and when)
- 非薬物療法 (Non-pharmacologic Therapy)
特に、4のセルフモニタリングと5の非薬物療法については、今後、日本においても重要な位置を占めてくると思われます。
今回はこういった考え方があるのだということだけでも、少し知っておいてもらえるだけでも十分です。
次回、実際にどのように說明しているかyou tubeの動画を使ってチェックしてみたいと思います。