今回は、薬剤師のセルフケアサポートについて書いていこうと思います。
調剤併設型の薬局で働いている方はもちろん、健康サポート薬局の新設もあり、セルフメディケーション、OTCの分野は以前よりも重要性を増していると思います。
私自身、カナダで薬学の勉強をするまでは、セルフケアの領域について全く無知でした。何をどうやって勧めれば良いのか。
考え方がさっぱりわかりませんでした。
そこで、今回は、薬剤師がセルフメディケーションを勧める上で、
どのように考えたら良いか、何をすべきか、
という基本中の基本について、お話しします。
この記事を読めば、セルフメディケーションを支えるための大きな流れ(基本の3ステップ)がわかります。
( セルフメディケーションはそんなに重要なの?って思う方は、先にこちら Minor Ailmentsの領域をわかりやすく說明してみる を読んでください。)
今回の記事をぜひ読んで欲しい方
- セルフケアサポートに興味がある方
- OTCの勧め方など基本的に何をしたら良いかわからない方
- カナダの薬剤師がどのようにやっているか興味がある方
薬剤師がセルフケアを勧めるための3ステップ
3ステップは、下記の通りです。
①情報収集 (患者の訴えと患者情報の把握)
②アセスメント(患者の評価)
③アクション(何もしない or OTCを選ぶ or/and 非薬物療法 or/and 病院へ紹介)
つまり、聞いて、考えて、実行する、の3ステップですね。
では、詳しく1つずつ見ていきましょう。
①情報収集 (患者の訴えと患者情報)〜まずは聞くことから始めよう〜
大きく分けて2つ、患者の訴えと患者情報について聴き取りをします。
実際に聞き取る内容の例としては、以下の通りです。
患者の訴えについて
主に患者の症状の重症度を把握するために必要な情報です。
ここで聴き取る内容は、患者の主訴に合わせて変えます。
例:「どんな症状ですか?」「いつからですか?」「それ以外に症状はありますか?」「医師に受診しましたか?」「すでに何か市販薬を試しましたか?」
患者情報について
主に適切なOTCを選ぶために聞き取るために必要な情報です。しかし、同じ症状であっても患者の年齢や既往歴などによって、病院受診を推奨する可能性もあります。
例: 「現在、処方箋薬や市販薬を服用していますか?」「持病はありませんか?」「アレルギーはありませんか?」「年齢はいくつですか?」「妊娠や授乳中ではないですか」
②アセスメント(患者の評価) 〜考えてみる〜
アセスメントとは、①のステップで得た患者の訴えや患者情報から、その重症度を評価すること、です。
重症度の評価方法については、カナダの薬学を勉強するために使用した、Minor Ailmentsという本に従って評価することがカナダでは多いです。
『英語の本なんて読めないし、重症度の評価なんてできないよ』、と思った方。
今後少しずつ說明していくので大丈夫です。
今回は、重症度を確認する必要があるんだ、ということさえわかって頂ければいいです。
少しだけ、Minor Ailmentsに書いてある考え方を紹介しますと、「Red flagの症状に気をつける」ことが非常に重要です。
Red Flagは「赤い旗」、すなわち、重要な兆候や症状を示しています。
この特定の兆候や症状があった場合、大きな疾患が後ろに隠れている可能性があるため、病院受診を推奨します。
例えば、「頭痛」という症状を1つ考えてみます。
頭痛は非常にありふれた症状の1つで、日本の薬局でも多くの方が頭痛薬を買いにやってきます。
しかし一方で、「頭痛」はあくまで症状の1つであり、その原因はさまざまです。
単に緊張型頭痛の場合もありますが、一方で脳出血や髄膜炎が原因であるというケースも考えておかないといけません。
これら重症な疾患を見逃さないために、「どの程度の痛みですか?」「熱はありませんか?」といった質問が非常に重要です。
(頭痛時に確認すべきRed Flagについては、次の記事である脳梗塞にロキソニンを勧める国、日本で說明します。)
③アクション (何もしない or OTCを選ぶ or 病院へ紹介 +/- 非薬物療法) 実行しよう!
患者の評価をした後、
1) 何もしない or 2) OTCを選ぶ or or 3) 病院へ紹介 +/- 非薬物療法 のいずれかのアクションを起こします。
1)何もしない
何もしなくても自然に治る場合、有効なOTCがない場合など、「何もしない」を選ぶことがあります。
子供の軽症の中耳炎などは自然に治る場合が多く、基本的に抗菌薬を必要としません。
ただし、患者やその家族は症状があると非常に心配になると思いますので、安心させるような言葉をかけてあげる必要があります。
2)OTCを選ぶ
「OTCを選ぶ」が適切だと判断した場合、始めに得た患者情報を考慮した上で、妥当なOTC、その用法用量を伝えます。
患者によってはアレルギーや副作用歴があったり、病名禁忌や相互作用があるので、それらを考慮した上で選択する必要があります。
3)病院へ紹介
患者の症状が重症である可能性がある場合、病院受診を推奨します。
また、病院受診を推奨する場合でも、来週までに受診すればいいのか、それとも今すぐ救急外来にかかった方がいいのかの判断も必要です。
非薬物療法も、これらの3つの選択肢に加えて推奨します。
非薬物療法とは、ライフスタイルの見直しやその他に薬を使わずにできること、です。
これについては今後紹介していく予定です。
今回のまとめ
いかがだったでしょうか。
今回はまず、
- セルフケアをサポートするためには、3ステップで考える
- 3ステップとは、①情報収集 ②アセスメント ③アクション である
の2つがわかって頂ければ、うれしく思います。
まずは、聞くことから始めてみませんか?