カナダ薬剤師になるために、試験を受けたり英語を勉強すればいいのはわかったけど、「カナダ薬剤師になるための全体像がわからない」と困っている方も少なくありません。
- どんな種類のテストがあるの?
- どのくらい費用や準備に時間がかかるの?
- ビザはどうしたら良い?
など疑問を抱えている人も多くいます。
そこで今回は、これからカナダ薬剤師に挑戦する初心者に向けて「カナダ薬剤師になるための全体像」についてざっくり解説します。
結論は、こちらです。
それでは、ここから詳細を説明していきます。
当記事の内容は、カナダ薬剤師をずっと前から挑戦している方でも難しい内容が含まれています。
今回の記事のゴールは、全体の流れがなんとなくわかるレベルで大丈夫です!
一度で完璧に理解しようとせず、実際に行動しながら知識も増やしていきましょう!
カナダ薬剤師になるための2つの条件
日本の免許をトランスファーし、カナダで薬剤師として働くためには、2つの条件をともに満たしていることが必要です。
1つ目の条件に「カナダの薬剤師免許を持っていること」です。
これは日本でも一緒ですよね。
薬剤師は、薬学の専門知識を持っていることが必須だし、実習を終えて経験も持っていないといけません。
免許があることは、「この人は薬剤師の資質がある」という保証をしてくれるものです。
2つ目の条件は、「ワークビザを持っていること」です。
ワークビザとは「労働ができるビザ」のことです。
薬剤師免許があれば働けるんじゃないの?
実は免許があるだけでは働けないんだ。
僕たちが日本で働けるのも、日本の市民権があって、そこに労働する権利があるからだよ。
ここまでをまとめると、カナダで薬剤師として働くためには、「カナダの薬剤師免許を持っていること」「ワークビザを持っていること」の2つの条件を満たすことが重要です。
カナダの薬剤師免許取得のプロセス
カナダの薬剤師を取得するための方法には、大きく分けて2種類あります。
1) 現地の薬学部を卒業すること
2) 日本の薬剤師免許をトランスファー(移行)すること
このブログでは、
2) 日本の薬剤師免許をトランスファーする方法について書いていきます。
その理由として、コストを抑えかつスピーディーに薬剤師になることができるからです。
私もこの方法で免許を取得しました。
免許のトランスファーとは、日本の薬学部の卒業証明書などの提出や評価試験を受けることで、カナダの薬学部卒とみなしてもらう方法です。
トランスファーはカナダの薬学部に通い直す手間を省くことができます。(日本の薬剤師免許がなくなるわけではないので、安心してください。)
免許取得の具体的なステップ
カナダで薬剤師免許をとるためのステップは、以下の通りです。
- 英語試験 (English Exam)
- Gateway Canadaの登録/書類審査 (Document Exam)
- 評価試験 (Evaluation Exam)
- ブリジッングプログラム & インターンシップ (bridging program & Internship)
- 国家試験 ( Qualifying Exam)
- 法律の試験 (Jurisprudence Exam)
注) 多くの日本人が英語試験で苦労するため、英語試験の順序をあえて前に持ってきてあります。
カナダ薬剤師試験のプロセスは、一言でいえば、勉強の積み重ねです。マラソンのように毎日コツコツと勉強をやっていくしか方法がありません。
ただし、正しい方法でコツコツと勉強していけば、その成果は出てくるといえます。
英語試験 (English Exam)
英語力を評価する試験です。カナダの場合、IELTSやTOEFLなどから好きなテストを選ぶことができます。日本のTOEICとは異なり、Listening, Reading, Writing, Speakingの4技能を図るテストです。
• 2年ごとに再試験が必要
• 州によって求められるスコアが異なる
• 準備にかかる時間の目安: 3- 6か月(本人の英語力による)
• かかる費用: 2-3万/回
●必要な英語スコア(州ごとにスコアが異なる)
書類審査 (Gateway Canadaと Document Exam)
Gateway Canadaの登録
書類審査 Document Exam
日本の薬学部の教育内容が、 カナダの薬学部の教育と同等であるかを評価する試験です。Examという名前ですが、実はテストではありません。求められた書類を全て提出したら終了です。
• 卒業証書や大学の成績証明書などを送る
• シラバスの提出が求められることもある
• 準備にかかる時間の目安: 1〜2か月 (カナダは基本ゆっくりなので)
• かかる費用: 665CAD
評価試験 (Evaluation Exam)
生化学や薬理学、薬剤学、薬物動態学などの評価試験。この試験がカナダで薬剤師になるための、1つ目の関門と言われています。
• マークシート方式
• 日本の薬剤師国家試験の範囲でほぼカバーできる
• 準備にかかる時間の目安: 6か月〜
• かかる費用: 850CAD
大学のブリッジングプログラム & インターンシップ
● 大学のブリッジングプログラム
カナダ国外の薬学部卒業生を対象に、「現場とのギャップ」を埋めるために作られたコースです。
• 参加が必須となっている州もある
• BC州のプログラムは3か月で、100万程度
• コストはかかるが、今後の薬剤師のキャリアを考えると、安い投資
☆魅力的なブリティッシュコロンビア(BC)州のプログラムhttps://cpd.pharmacy.ubc.ca/programs/international-pharmacy-graduate-ipg/why-ubc-canadian-pharmacy-practice-program
• PharmDを持つ薬剤師陣による薬物治療学の講義
• 異文化に入る海外薬剤師のためのコミュニケーション論
• カナダの国やBC州の法律について
• マルチタスクを求められるラボでの実践的な授業
• 薬剤師のキャリアアップのためにもぜひ参加したい
●インターンシップ
カナダの薬局での実務実習です。薬剤師の監視の元で、監査から投薬、OTCカウンセリングなど薬剤師業務を全て経験します。
• インターンシップは3-6か月と州によって異なってくる
• この間に大量の課題の提出が求められる
国家試験 (Qualifying Exam)
カナダの薬剤師になるための最終試験です。これに受かれば、晴れて薬剤師として働くことができます。カナダの薬学生も受けるので、試験の難易度は中々難しいです。
• 筆記試験とOSCE(オスキー)の2つの試験がある
• 筆記試験は実臨床に関わる試験が多い。
• OSCEは7分間のロールプレーで、医師や患者を相手にする。
• コストは2000ドル程度と高い
(筆記試験500ドル OSCE 1500ドル)
• かかる時間の目安: 6か月〜(個人差が大きい)
法律の試験 (Jurisprudence Exam)
薬局や医薬品の法律に関する試験です。州ごとに薬剤師の権限が異なっているので、州が管轄している試験です。薬剤師だけでなく薬局テクニシャンも同じ試験を受けます。難易度はそこまで高くありません。
• かかる時間の目安: 数週間〜
• かかる費用の目安: 100ドル〜
ワークビザ取得のプロセス
ワークビザは取得のプロセスは、しっかり計画することによってクリアすることができます。
自分の今の状況をもとに、どのようにワークビザを取得するかをあらかじめ決めておけば、後々困ることはありません。
ここからは、ワークビザの取得方法について、一般的な範囲でお伝えしていこうと思います。
ワークビザって働く時だけでいいんじゃないの?
ワークビザの取得方法について
ワークビザの取得方法は、結論をいうと、ポスグラビザ (Post Graduation Work Permit)を取るのがいいなと思っています。
このビザは、大学で8か月以上のプログラムを終了した学生に与えられるオープンのワークビザです。2年制の大学に行けば最長3年間のビザを取得することが可能です。
他にワークビザを取得する方法として、
- ワーホリビザ
- Co-op ビザ
- スポンサーによるビザ
- 配偶者ビザ
などがあるので、これらを使うのもありだと思います。
僕自身もワーホリビザを使った経験があり、その方法も勧めていたのですが、デメリットとして時間との戦いが常に発生します。ワーホリビザは30歳までに使わないといけないものです。
日本の薬学教育が6年制に変わったこともあり、全てストレートに行っても24歳で薬学部を出るとなると、残り6年がタイムリミットになります。
一般的に言うと、免許取得のプロセスに4年ほど時間がかかるため、この6年が結構ギリギリになるケースが多いような気がしています。
したがって、自分の年齢に縛られずに得られるポスグラビザ (Post Graduation Work Permit) を取得することをオススメします。
ポスグラビザを使ったモデルプランは、こちらの記事を参照してください。
まとめ
色々な情報をかなり詰め込みましたが、今の時点ですべて覚える必要はないので、「ふーん、そんなのがあるんだ」程度に思っておいてもらえればと思います。
今回のまとめです。
- 日本の薬剤師免許をトランスファーする方法がオススメ
- カナダ薬剤師として働くためには、カナダの薬剤師免許取得とワークビザ取得の2つが必須。
- カナダの薬剤師免許取得には、英語試験、Gateway Canadaの登録とDEの申請、EEの合格、ブリッジングプログラムとインターンシップの終了、OSCEとMCQの合格、法律の試験がある。
- ワークビザ取得は、短期カレッジに通うのが無難である。
カナダ薬剤師に挑戦する上で、免許取得プロセスが一番大変でかなり勉強が必要ですが、同時に実際に働くためのワークビザも考慮してもらえるといいなと思います。